解放するドローイング

ボールに何か描こうと思い、絵の具を塗っていた。
その時、手が滑り、まだ絵の具の乾いていないボールが紙の上に落ちる。
その落ちて転がっていった跡が、私の絵の先生となった。
ボールを握り、絵の具をつける。
手とボールが絵の具でぐちゃぐちゃになるのを感じながら、ボールを紙に押し付けて、転がす。
ボールは、エネルギーを方向づける。
私は、ボールの動き続ける現在地点に集中して、その行く末を追う。
目を閉じて、身体の伸びを感じながら、ボールが画面に当たる音と振動を頼りに線を引いていく。
不思議なことに、線を操作することを手放すほどに面白い線になっていく。
この線を介して、自分の何かが解放されている快感が気持ちよかった。
それを、解放するためのドローイング、「リバティ・ドローイング」と名付けた。